増木コンサルマガジン

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建築士のキャンプの楽しみ方

今回の士の部屋【建築士編】は「建築士のキャンプの楽しみ方」という要望がありました。そもそも仕事のことや、俗社会のことを忘れ自然に溶け込むことがキャンプの醍醐味であるはずなのに…。仕事にキャンプを持ち込んでもキャンプに仕事を持ち込むことなかれです。

テントの中で仕事の夢をみてうなされては台無しです。

 

 

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▲非日常を楽しむキャンプ 

 

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火を扱う経験を                  

 

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▲仕事の合間にキャンプを持ち込んだ例(昼食を外で楽しむ)

 

キャンプの醍醐味と言いましたが、私は年に2回から3回程度キャンプに行くくらいで、本格派アウトドア一家ではありません。
我が家がオール電化住宅なので火を扱う良い機会くらいの心意気のキャンプです。
そして火を扱うといってもバーベキューコンロを持っているわけでもなくiwataniのカセットコンロをメインに使っているかなりのゆるきゃん。
ゆるキャンパーぶりです。ご飯を炊くのは鍋ですが、コンロはiwataniのカセットコンロです。温度調整がとても楽なのでおいしくご飯が炊けます。


 

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   ▲ Iwataniのガスコンロとuniflameの鍋でご飯を炊く

 

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   ▲  Iwataniのガスコンロでアフィージョも作れます

 

そんな、ゆるキャンパーでもテントは持っています。実はこのテント自然の中で快適に過ごせるようによく考えられています。
それは自然環境の中で快適に過ごすための住宅と非常に関係の深い仕組みです。
多くのテントは二重構造になっていて、通気性の良い生地で作られたインナーテントの上からフライシートと呼ばれる防水性の高いシートをかぶせて設置します。

 

 

 

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▲通気性の良いインナーテント

 

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▲インナーテントにフライシートを被せた状態

 

 

外側のフライシートは雨や風を防ぐ効果があるのですが、それだけではありません。
実はテント内部に結露がおこることを抑えてくれています。森の中のキャンプ場では夜中急に気温が下がります。
さらに人間の体温と吐き出す二酸化炭素等で湿気を帯びながらテント内の温度は上昇します。この温度の差が結露を生みだします。
寒い冬に暖かくした部屋の窓ガラスが結露を起こすのと同じ状態です。

呼吸や料理などで湿気を帯びた暖かい空気が外気温に近い窓ガラスで急激に冷やされるため、窓付近の空気が水分をためる限界(飽和水蒸気量)を超えてしまいます。
そこで窓ガラスの室内側が結露ポイントとなり水滴がついてしまうのです。

テントの場合フライシートがないとインナーテント内部が結露ポイントになってしまい、テントの中がビチョビチョになりかねません。
そこでインナーテントとフライシートの2重構造です。インナーテントの生地は通気性がよいので、湿気を帯びた熱気をインナーテントの外に出します。
フライシートは外の空気で冷やされている上に防水性、撥水性が高い生地で両面作られているためにフライシートの内側で結露を起こし、インナーテント内部での結露を防ぎます。

 

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▲フライシートは抜群の防水性能

 

 

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   ▲エントランスの庇にもなります

 

では、住宅はどうすれば窓ガラスの結露を防げるのか?

答えはペアガラスと樹脂サッシです。

アルミやガラスは熱伝導率が高いため外気の温度を伝えやすく、室内側アルミ表面で室内の暖かい空気が急激に外気近くまで下がるために結露が起こります。
これを熱伝導率の低い樹脂にすることによって室内側で急激に気温を下げることを防ぎます。
ガラスも同様にガラスとガラスの間に乾いた空気やアルゴンガスを入れることによって断熱性能を高め、室内側で急激に気温が下がることを防ぎます。
これによって室内側での結露を少なくすることができます。ちなみに空気0℃の時の熱伝導率は0.024w/(M・K)です。
最近はやりの高断熱材である現場発泡ウレタンフォームの熱伝導率が0.036w/(M・K)(数値が低いほうが断熱性能は上)ですから空気は断熱性能高いのです!驚きですね。

 

 

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▲アルゴンガス入りの樹脂サッシAP331(YKKap)

 

住宅の外壁は透湿防水シートという通気性があり防水性能を持ったシートと、外壁素材(サイディング等)の間に通気層18㎜程度の通気層を設けます。
湿気を帯びた空気が透湿防水シートを通って室外に出たときに結露し水滴となりますが、基礎上の通気水切りから入った空気が通気層を通って上昇し軒裏にある換気材から外に出るという空気の流れを作り、水滴を乾かします。

テントも同様にインナーテントとフライシートの間に空気層を設け、ベンチレーターという空気を逃がす部分を開けることによって、フライシートについた結露を空気の流れで乾かしてくれます。

 

 

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▲住宅の外壁と通気層                            

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▲右上の赤い部分がベンチレーター

 

俗社会と離れ自然に溶け込むキャンプでしたが、建築士の仕事と結構近いところにあるのかもしれません。
ここ数年、夏場のキャンプは海辺に行くことが多いのですがよく夜中雨にやられています。
海辺は森の中ほど夜間気温が下がりません。
晴れていればすべての窓を開けっ放しにして眠ると快適ですが、雨はだめです。
快適を追及して作られているテントでもすべてを締め切ると暑い…。
海辺のキャンプ場では夜中雨が降ったりやんだりすることが多いので、降っては閉め切って、雨が止んでは開け広げるを繰り返します。まさに自然と共存?です。
最近のキャンプ場にはサイト単位にコンセントが設置してある事もあります。スマホを充電できるので、雨雲レーダーを確認することで自然に対してすこし対抗できます。

 

ん?

コンセントがあるなら扇風機を持っていくとテントの中は快適なのでは…。

   コンセントがあれば炊飯器が使えるので火加減の調整もいらないのでは…。

   コンセントがあれば冷蔵庫がつかえるので冷たいデザートなんかも…

いや、ダメダメ。火を使う生活を求めてキャンプを始めたはずではないか!!

暑いテントの中で扇風機の夢を見て、結局うなされる建築士でした。

 

 

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▲太陽が出たら全力で乾かす。                     

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▲雨を楽しむのもキャンプです(強がりではない…)

 

 

一級建築士 宮﨑達也

 

 

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